日本漢方は西洋医学的な診断名がなくても症状や症候から方剤を選べるので西洋医学では対処できないような漠然とした不調、心身の消耗感・疲弊感といったものにも漢方薬なら対処可能な事が少なくありません。またストレスや心の不調が関与しているような身体症状や痛み、冷えなどにも西洋薬から変更、あるいは併用することによって意外に効果的な場合が多いです。他にも便秘やめまい、更年期症状を始めとする自律神経失調症状なども漢方の得意分野で方剤の種類も西洋薬以上にあるといえます。
以下のような症状でお困りの方は是非ご相談の上、漢方薬をお試しいただければ、と思います。
- 当院の漢方外来は保険診療の範囲でおこなうエキス製剤中心で、煎じ薬は扱いません。
方剤によっては錠剤やカプセル製剤もあります。
ご相談の対象例
- 通常治療に漢方治療を追加したい方:
慢性疼痛、睡眠障害、便秘、帯状疱疹、坐骨神経痛、下肢静脈瘤、下肢むくみ、夜間頻尿、鼻炎、痛風など - 西洋医学的治療で体調不良が改善しない方:倦怠感、胸やけ、慢性下痢、浮遊感、自律神経失調症状など
- なるべく西洋薬を使いたくない方、減らしたい方:睡眠障害、更年期症状、月経前症候、便秘、慢性痛など
- くりかえす症状:めまい、浮遊感、月経痛、頭痛、こむらがえり、膀胱炎、副鼻腔炎など
- 時間をとって漢方の相談、女性内科相談をしたい方(特に初診の方)
- 漢方の予防的内服で体調のバランスを整えたい方:肩こり予防、こむらがえり予防、頭痛予防、冷え症など
- (我慢を身体にためこむことによる)気うつ感、気力低下、倦怠感、疲弊感、喉がつまったような違和感など
- (ストレスや不安が原因と思われる)動悸、血圧不安定、睡眠障害、胃腸障害、便秘、痛みの増強、円形脱毛など
- (イライラや緊張が原因と思われる)自律神経の乱れ、首肩こり、便秘と下痢、パニック障害、眼瞼痙攣、多汗症など
- (身体的・精神的疲弊が原因と思われる)倦怠感、耳鳴、浮遊感、めまい感など
- 加齢に伴う諸症状:夜間頻尿、かすみ目、腰痛、こむらがえり、冷え、皮膚掻痒感など
- 冷えによる諸症状:しもやけ、頻尿、下痢、神経痛、腰痛、こむらがえり、頭痛 など
- 女性ホルモン変動による諸症状:更年期障害、のぼせ、発汗、イライラ、肩こり、頭痛、生理前のむくみ など
漢方治療で効果が期待される疾患、症状例
コロナなどの感染症後遺症(疲労感、倦怠感、味覚異常、耳鳴、浮遊感、メンタル不安、脱毛など)
更年期障害、月経困難症、PMS、月経不順、月経前の頭痛・むくみ、性器出血
帯状疱疹後神経痛、神経痛、慢性疼痛、しびれ、腰痛、膝関節腫脹・浮腫、肩こり予防、五十肩、リンパ節炎
心身症(過敏性腸炎、心臓神経症)、メンタル不安、パニック障害、軽いうつ傾向、気力低下
自律神経失調症、起立性低血圧、フクロウ症候群(朝しんどくておきれない中高生)、低血圧、血圧不安定
いわゆるお天気頭痛、気象病、浮遊感、めまい感、二日酔い、車酔い、暑気あたり、熱中症
花粉症の鼻閉、アレルギー性鼻炎の朝方の大量水様鼻汁、目の充血、鼻出血
声がれ、嗄声、乾燥による咳嗽、いわゆるえへん虫、咽頭痛、咽頭違和感、口内炎、
乾燥性皮疹、掻痒感、アトピー性皮膚炎、にきび、ひどい帯状疱疹、化膿性皮膚疾患、虫(蜂)刺され
外傷や打撲の疼痛や皮下出血(特に顔面)、むちうち、ぎっくり腰、こむらがえり
自然なお通じを期待する方(便秘、下痢、便秘と下痢くりかえす)、慢性下痢
(おなかが張って)食欲不振、神経性胃炎、排ガス異常
慢性膀胱炎で抗生剤をよく使うような方、排尿の異常、夜間尿、尿もれ、血尿、下肢の浮腫、水太り体質
ベンゾジアゼピン系睡眠薬を減量したい方、睡眠障害、慢性副鼻腔炎で抗生剤をよく使う方
フレイル、食べられない、逆流性食道炎、脳血管障害後遺症、誤嚥予防、食あたり
体力や免疫力の低下、冷え性、寝冷え、(感染症の後)夕方に微熱が続いたり調子が戻らない・・・
漢方治療の特徴について
漢方医学は心と身体はつながっていてお互いに強く影響しあう「心身一如」という考え方に基づいた治療体系となります。そのため西洋医学では対処しにくい‘心の不調‘が関与する身体症状や漠然とした不調、心身の消耗感といったものにも効果が期待できます。
また日本漢方には病名や病気の原因よりも身体症状や症候から処方を選択する「方証相対」という考え方があり、西洋医学的診断名がなくても症状(例えば倦怠感や気力低下など)に対する方剤を処方することができます。
同じ症状や病名であっても患者さんの体質や身体の抵抗力によって適する処方も異なり、診たて方や診る人によっても処方がかわり、処方の選択肢もいくつかでてきます。(同病異治)
処方の奏効率を上げるには漢方医学的な視点からの総合的な判断が必要で丁寧な問診や処方への反応なども参考にその人にあった方剤を診たてていく事になります。その診たてが合致しなかったり、病態変更があれば随時処方変更していくことになります。漢方薬はゆっくり効くイメージが一般的ですが、即効性のあるものや症状発現時のみの頓用使用のものもあります。また診たてがあえば目を見張る効果を認めるケースもあり、そのような嬉しいケースを少しでも増やしたく日々研鑽中です。
一つの漢方方剤には複数の生薬が配合されているため、一つの方剤だけで同時に様々な症状が治る事(異病同治)も多く、個々の症状にそれぞれ処方を追加していく西洋薬と違い、薬の減薬につながるケースが多いのも特徴です。
加齢に伴う諸症状(夜間頻尿、かすみ目、腰痛、こむらがえり、冷え、皮膚掻痒感など)には牛車腎気丸
冷えによる諸症状(しもやけ、頻尿、下痢、神経痛、こむらがえりなど)には当帰四逆加呉茱萸生姜湯
女性ホルモン変動による諸症状(更年期ののぼせ、発汗、イライラ、肩こり、頭痛など)には加味逍遥散
といったケースが相当します。
薬の減薬につながるその他のケースとして、慢性疼痛や慢性頭痛で消炎鎮痛剤を多用する場合は、腎機能障害の悪化や、薬剤性頭痛の誘発にもつながりかねず、ぜひとも漢方の併用で減薬をおすすめしたいところです。近年、睡眠障害でベンゾジアゼピン系睡眠薬の長期漫然使用が問題視されていますが、漢方薬の併用によりそれらも減量や中止できるケースがあり、長年服用されている方でも一度はお試しいただきたいところです。
また漢方薬でも副作用がおきる場合はあり、適切な使用が望まれるのは西洋薬と同様です。 こむらがえりに即効性があるとして有名な芍薬甘草湯も漫然と頻回使用したり、予防的に毎日内服する事で血圧上昇や下肢の浮腫につながりかねず、症状をくりかえす場合には体質や原因を考慮した漢方薬を予防内服することで、芍薬甘草湯の減量にもつながります。