呼吸器内科

肺は人体のフィルターのような臓器で、呼吸とともに取りこまれた空気中のさまざまな有害物質や病原体に曝露されるため、腫瘍や感染、アレルギーなどの多種多様な疾患が肺に生じることになります。主要臓器の中でも、肺は特に疾患の種類が豊富で、正確な診断や鑑別には知識と経験を要します。
当院では呼吸器疾患の患者様は、呼吸器の専門医が担当します。胸部のレントゲンのみならず、呼吸機能を測定するスパイロメーターや、喘息管理において有用な呼気NO(一酸化窒素)測定器を有しておりますので、気管支喘息COPDなどの評価や治療効果の判定を正確に実施することが可能です。

詳細な検査が必要と医師が判断すれば、血液喀痰を採取し、精査目的の画像検査(胸部CT、MRI 、PETなど)を周辺の医療機関に依頼して、診断をつけていきます。エコー検査を用いて、胸水を採取することもあります。

気管支鏡検査などのさらに専門的な検査や、手術などの治療が必要と考えられる患者様は、近隣の最適と考えられる医療機関を紹介させて頂きます。当院の呼吸器専門医は、長らく肺の腫瘍や感染症治療に携わってきましたので、高次医療機関での加療が終わったのち、診療を引き継ぎ、当院で加療を継続することも可能です。

また、近年大きく進歩しつつある気管支喘息治療に関しても、血液検査呼気NO測定により、治療効果の予測を行った上で、生物学的製剤とよばれる新しい治療薬を積極的に導入してまいります。

COPD肺線維症などの慢性呼吸器疾患や、進行肺癌などによる低酸素状態の患者様には、積極的に在宅酸素療法を提供いたします。

保険診療にて禁煙治療も行っておりますので、禁煙補助薬を処方することが可能です。禁煙治療は12週間の間に、計5回の診察を行うことで、禁煙の達成を目指します。2~4回目の診察はオンライン診療にて行うことも可能です。
その他、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに対する、在宅持続陽圧呼吸療法(在宅CPAP)も行っております。状態が安定していれば、在宅CPAP療法を行っている患者様に対しても、オンライン診療による遠隔モニタリングが可能です。

以下の症状に心当たりがあれば、一度ご受診ください

  • 咳や痰が長引いている(3週間以上)、血痰が出る
  • 微熱や寝汗、全身倦怠感が続いている
  • 胸や背中に痛みがある
  • くしゃみ、鼻水、鼻づまりがなかなか改善しない
  • 軽い運動でも息切れしてしまう
  • いびきがひどく、昼間も眠気が強い
  • タバコが止められない
  • 胸部レントゲンで異常な影を指摘された
  • しばらく胸部レントゲンを撮っていない
  • など

呼吸器内科で扱う主な対象疾患

気管支喘息 ・COPD(慢性閉塞性肺疾患)・気管支拡張症 ・肺炎  ・肺結核(排菌陰性の場合に限る) ・非結核性抗酸菌症・自然気胸・胸膜炎(膿胸)・特発性肺線維症(通常型間質性肺炎)・好酸球性肺炎・アレルギー性鼻炎(花粉症)睡眠時無呼吸症候群・慢性呼吸不全・原発性肺癌 など

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは

タバコの煙など有毒なガスを長い年月に渡って吸い込み、それによって気道(気管支)が狭窄していき、酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞が壊れていく病気が慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。同疾患は、喫煙との関連性が強いとされ、ヘビースモーカーの方が発症しやすいと言われています。

非常にゆっくりと病状が進行していくため、初期の時点では、無症状のことが多いです。しかし、病状が進行していくにつれ、坂道や階段を上がっていくだけで息切れが出る、あるいは呼吸がしにくくなります。問診や症状からCOPDが考えられる場合は、胸部レントゲン肺機能検査などを行うことで診断をつけることができます。

いったん壊れてしまった肺胞が元に戻ることは有りませんので、これ以上、状態を悪化させないために、喫煙者の方であれば禁煙治療を行います。また、息切れなどの症状があれば、喘息などの要因が絡んでいないかを見極めた上で、患者様に最適と思われる気管支拡張薬を選択いたします。

特発性肺線維症(IPF)とは

肺の間質におこる炎症は間質性肺炎とよばれ、感染症による肺炎(主に細菌などが原因となっておこる肺炎)とは区別されています。 また、間質性肺炎のなかでも原因がはっきりと特定できないものを特発性間質性肺炎といい、しばしば肺の線維化(肺線維症)をともないます。IPFは特発性間質性肺炎の一種で、特発性間質性肺炎のなかで最も頻度が高い病気であることが知られています。

大量のコラーゲン線維などが肺胞の壁(間質)に蓄積された結果、酸素や二酸化炭素の通り道である間質が厚く、硬くなることを、肺の線維化といいます。間質に線維化がおこると、肺が十分にふくらまなくなり、ガス交換がうまくできずに、酸素が不足し息苦しくなります。
IPFは間質の線維化が徐々に悪化していく病気です。IPFの病気の進行のスピードと経過は、患者様それぞれで異なり、数年の単位で徐々に病気が進行する方もいますが、数日から1ヵ月の間に突然、息苦しくなり、呼吸の機能が急激に悪化する場合があり、急性増悪とよびます。IPFでは、呼吸の機能を維持し、急性増悪をおこさせないことが大切です。

IPFの確定診断は、呼吸器専門医、放射線科医、病理医による集学的検討が必要とされ、症状や画像所見からIPFが疑われる方は、確定診断のために集学的検討の可能な病院をご紹介いたします。病院と連携しながら、IPFと確定診断のついた患者様の日常的なフォローをさせて頂きます。

気管支喘息に対する生物学的製剤とは

気管支喘息は、慢性的な炎症により気道が狭くなる疾患です。炎症がある気道にダニやホコリ、ハウスダストといった刺激が加わると発作が起こり、喘鳴や息切れ、咳といった症状が出ます。喘息の治療は、気道の炎症を抑える吸入ステロイド(ICS)を中心に、長時間作用性β2刺激薬(LABA)の吸入や、気管支拡張薬経口ステロイド(OCS)の内服などを症状に応じて組み合わせるのが基本です。
しかし、こうした薬剤を複数組み合わせて治療してもコントロールできない患者様も一定数おり、「重症喘息」「難治性喘息」と呼ばれ、喘息全体の5~10%を占めるとされています。

近年、こうした重症喘息患者様向けに、生物学的製剤が相次いで登場しています。
抗IgE抗体であるオマリズマブ(商品名:ゾレア)、抗IL-5抗体であるメポリズマブ(ヌーカラ)、抗IL-5受容体α抗体であるベンラリズマブ(ファセンラ)、抗IL-4/13受容体抗体であるデュピルマブ(デュピクセント)の4つの生物学的製剤が2020年4月の時点で、重症喘息の治療に使用可能となっています。
血液検査や、呼気一酸化窒素ガス測定などを行い、最適と考えられる薬剤を選択し、提供させて頂きます。

非結核性抗酸菌症とは

抗酸菌(こうさんきん)とは、グラム陽性桿菌であるマイコバクテリウム属に属する細菌群の総称で、結核菌も含まれます。非結核性抗酸菌症とは、結核菌以外の抗酸菌が肺に感染して起こる病気です。非結核性抗酸菌は土や水などの環境中にいる菌で、結核菌とは異なり人から人には感染しません。アビウム菌とイントラセルラーレ菌がおこすものが8割をしめ、肺MAC症と呼ぶこともあります。非結核性抗酸菌症は、胸部レントゲン写真やCT検査で肺の異常陰影を認め、喀痰検査で菌を認めれば診断がつきます。多くは数年から10年以上かけてゆっくりと進行し、症状や肺の影が悪化してくる場合には薬による治療を行います。

非結核性抗酸菌症の診断および治療、経過観察は当院でも担当させていただきます。

在宅酸素療法

肺の機能低下や心臓の機能低下により、血液中の酸素が不足した状態(呼吸不全)になることがあります。このように、血液中の酸素が不足している方が、自宅など病院以外の場所で不足している酸素を吸入する治療法が「在宅酸素療法」です。COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺線維症・間質性肺炎、肺結核後遺症などの高度慢性呼吸不全や、肺高血圧症、慢性心不全、重度の群発頭痛などが、対象となる疾患です。
医師の指示により酸素供給機器を使用することが健康保険の適用になっており、原則的に月に1度医療機関を受診することが必要となります。

酸素吸入は、自宅では「酸素濃縮装置」を、外出時には「携帯用酸素ボンベ」を使用するのが一般的です。他に、液体酸素を用いた装置で、自宅で液化酸素装置の親容器を、外出時には子容器に液体酸素を充填して吸入するという方法もあります。患者様の呼吸状態や、生活スタイルなどに合わせて、適切と考えられる酸素の投与量や吸入方法を選択いたします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と在宅持続陽圧呼吸療法(在宅CPAP)

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)とは、寝ている間に何度も呼吸が止まり、夜間に十分な呼吸ができなくなる病気です。睡眠の質が低下する結果、日中の強い眠気や頭痛、体のだるさ、集中力や記憶力の低下などを生じ、日常生活や業務に大きな支障をきたす可能性があります。また、治療抵抗性の高血圧や2型糖尿病などの生活習慣病の重要な原因になることも分かってきています。SASはその原因によって「閉塞性睡眠時無呼吸タイプ」と「中枢性睡眠時無呼吸タイプ」に分類することができ、在宅持続陽圧呼吸療法(在宅CPAP)は、閉塞性睡眠時無呼吸タイプに有効な治療法で、睡眠中に鼻に取り付けた専用のマスクから気道に空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐ治療法です。
世界的にも安全性と治療効果が確認されており、現在、睡眠時無呼吸症候群の中~重症の患者さんでこの治療が第一選択となります。使用方法や治療管理につきましては、当クリニックで説明させていただきます。
健康保険でCPAP治療を行うには、毎月1回の定期外来受診が必要となります。